絵画買取の問合せから始まったエピソードをお話したい。
「児島善三郎の絵の事でお話をしたいのですが?」との問合せ。
「お売りになりたいのですか?」、「お探しなのですか?」
と尋ねたところ、電話の主はこう言った。
「絵画を買いたいのですが相場はどの位ですか?」
かなり絵画に詳しいお客様だなぁと思った。
作品年代とモチーフを聞いたところかなり精通した方である。
残念な事にお客様のご希望の作品がなかったので、
「時間を頂ければ探しましょう。」と伝えた。
とても絵の好きなお客様だったので、その後も絵の話に会話が弾んだ。
話しているうちに、お客様の知識がすごくある事がわかった。
そこで、「お手持ちの作品は、どんなのがあるのですか?」と
尋ねてみた。 すると・・・・
「1950年代の織田広喜先生の作品を持っています。」と言う。
画商でありながらファンでもある織田先生の話がでたので
ますます話しが弾んでしまった。
私は、織田先生には45年間、お世話になっていた事や先生とのエピソードを
懐かしく思いながら伝えた。
ここまでの事は、初めての電話でのやりとりの内容である。
その後、お互いの手持ちである作品画像をメールで送りあったり、
織田先生の1950年代、1960年代の作品の素晴らしさについて
お客様であるのも忘れ、感想を交わして盛り上がっていました。
それから数日して、私が送った作品画像の中に画集掲載されている
作品をとても気に入って頂けた。「購入したい!」と言う。
私の長い画商人生で電話とメールだけで商売になったのは
初めてのことでした。画商同士の取引であれば、電話1本でやりとりする
事はあるが、相手は顔も知らないお客様である。
お互いに声だけで成り立つ信頼関係の中、決して安い金額ではない
お金を振込ますと言う。
1950年代の織田先生の作品を気に入ってくださったのは大変、
嬉しいことではあり、顔を見たこともない私を信用してくれている事に
とても嬉しく思った。
昔は美術品というと投資の一部になった時代もありました。
近年は、本当に絵画が好きで予算にあった作品を集めるコレクターが
増えている。
画商を40数年していて、こんな商売の仕方は初めてである。
今も四国の方とはメールや電話などをして親しくお付き合いをさせて
いただいている。
いつの日かお目にかかりたいと思いながら。
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