ずいぶんと久しぶりのブログとなりました。
ここ最近、日本の政治も経済も、ぱっとしないと感じる。
特に経済においては、かれこれ20年以上も不景気つづきである。
どの業種も生き抜くのに大変な時代となってきた。
そんな時代の中、私は久しぶりに遠方の出張買取に出かけた。
場所は大阪である。
電話やメールのやりとりをした後、日時が決定し出発した。
新幹線、地下鉄、、モノレール、タクシーと乗り継いでの旅である。
先方へこれから、向かいますと連絡を入れたのが11時だった。
元万博会場の近くにあるというお客様の自宅付近まで来た時、
時計に目をやると、すでに午後3時であった。
日帰りの予定でいる私は、片道4時間もかかってしまった事に少し驚く。
思ったより時間がかかってしまった。
今日、買取に来た作品は、私も大好きな岡本太郎先生の油彩画である。
メールで届いた画像は、図柄も色あいもしっかり描いている2号サイズの素晴らしい作品であった。
画像を見た瞬間、これは本物の良い作品だと直感した。
画商を長くやっていると、直感が一番、確かなことが多い。
贋物の場合、見た瞬間、「あれ?」と直感で思うのである。
どこが?
何が?
と説明する前に、感じるのだ。
私はこの長年の感を大事にしている。
直感を無視して、見すぎると返ってわからなくなる事の方が多い。
不思議なものである。
その直感を信じて、大阪まで来たのである。
お客様にお会いした時、一番はじめに聞きたいことをまず尋ねてみた。
「どうして、私共の東京の画商に依頼してくれたのですか?」
私の質問にお客様は、笑顔でこう話してくれた。
「実は、関西の画商さんに2件、問合せをしましたが、
真贋について岡本太郎の鑑定人は現在不在のため、
難しいので査定価格をだすことはできません。といわれたのですよ。
査定してくれた画商さんがお宅だけでした。」
とのことだった。
なんだか嬉しい気持ちになってきた。
そして、今まで岡本太郎先生の扱った作品の数々を思いおこしてみた。
画像ではなく現物の作品を改めて見た時、
間違いないと確信することができた。
その方は岡本太郎のコレクターでした。
「太陽の塔」
「太陽の顔」
など数10点のグッズを見せていただきながら
先生の話で2時間以上も盛り上がってしまった。
その後、買取金額をお支払いし、先生の作品が私の手元に収まった。
そしてお客様は、この作品の思いを伝えてくれた。
「どうか、この作品を大事にしてくれて、理解してくれる方に納めてください。」
先生の作品を愛してやまないお客様の言葉を
大切に受け止め、失礼しました。
帰りの新幹線の中で、絵画の買取とは、偶然の出会いと
お客様との相性、信頼関係があってこその成立だと深く感じた。
翌日、30数年の年月を経て、額から作品を取り出した。
額縁は大分痛んでいたので、マットを取替え、額のメンテナンスをし、
再び作品を額装すると、
岡本太郎先生の作品が、素晴らしくよみがえりました。
後は嫁入りの日を迎えるばかりである。
作品を眺めながら、一期一会の一日を振り返り、
画商は、この出会いがあるから好きなのだと思った。
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