ある画廊さんから、一緒に査定をしてほしいと頼まれて、トランクルームに行ってきたことがある。
日本画、掛軸、10数点以上の作品を見て、評価をした。
お客様は他に3つの画廊さんへ問合せをしているとのことだった。
お互いに難しい話合いになるだろうと覚悟した。
ところが、話をしているうちに結論は簡単についてしまった。
その場で精算をし、和やかな空気の中で全てが終わった。
いつものように査定をし、いつものように買取をして
何事もなく終わったのである。
頼まれた画廊さんから、後から聞いた話だが、
その数時間後にお客様からメールが届いたそうである。
その瞬間、トラブルの文字が頭によぎったが、
それも考え過ぎで、
メールの内容は、このようなものであった。
この家は、祖父と父で50年以上に渡って美術品を収集してきました。
それが今日、ようやく整理が出来たことで安心しています。
更に、美術品のシミやキズ等を直して、再び日の目を見させてくれる機会が出来たことに深く感謝します。
長男としての責任が解き放され、美術品たちもとても喜んで
いると思います。
というお礼のメールであった。
ほっとするやら、とても勉強になった瞬間でもありました。
遺産としての美術品は相続したものにとっては、少しでも
高い金額で売りたいと思うのは本来、当然である。
その美術品の価値があればあるほど
倉庫に埋もれたままでいることに罪悪感にも似たものを
感じてしまう方もいるのだろう。
美術品を整理するといっても、色々なドラマがあり
皆それぞれの心情があるのだということを
知ることが出来た瞬間であった。
いつもの通り、査定して買取をする。
私にとっては、いつもの出来事でも、お客様の心情は色々なのである。
身が新たに引き締まる自分がいた。
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